2005年07月11日

篠田 青の『東京青松の道/東京青松から』
 植林一本目パンフレット序文 「ようこそ、小劇場へ!」

 本日は青松の植林一本目、『延長/絵美香』に足を運んでいただき、誠にありがとうございます。

 僕の現在を決定づけたのは、高校の教室で上演する、文化祭での演劇創りでした。教室という限られた空間に、舞台と客席があるのです。そこが物語で満たされる心地良さを、僕は学校の外にも求めました。小劇場は、観客と創り手が、お互いを肌で感じられる空間です。その濃密さは、大きな劇場はもちろん、映画やTVにも真似はできません。

 もちろん、自分が観客として小劇場に行くときも、その魅力を求めます。しかし、満たされることはないのです。僕が創り手だからではありません。電車に乗り、チケット料金を払うからには、楽しみたいと思います。それなのに、そこにあるのはスカスカした時間だけ。小劇場での時間が毎回そのようであれば、なぜなのだろうと考えます。

 足りないのは、物語でした。観客と創り手を繋ぎ、空間を満たすもの。

 気がつけば、演劇(劇場の大小を問わず)はもちろんのこと、映画にもTVドラマにも、良質な物語が少なくなっています。親と子を繋ぐ絵本でさえも、首をかしげるような新作がもてはやされているのです。このような時代では、哀しいことが起きるのも仕方ないのかもしれません。

 創り手はいつも、受け手に対する責任を負わなければならないと思います。PTAを意識しろ、ということではありません。創り手がやりたいことだけをやるという無責任さでは、スカスカした時間ばかりが増えていくのです。小劇場によくあるパターンとしては、小手先のギャグや劇団内の身内ネタ。それらの多くは役者個人が発しているもので、物語を無視したものです。それを許しているとすれば、脚本や演出もまた無責任だといえましょう。

 青松では、なるべくたくさんのお客様に満足していただきたいと思っております。快適とはいえないお席に、無駄に長くお座りいただくことはしません。あなたがお客様でいて下さるから、僕たちは上演できるのです。時間の長さで料金をいただくのではなく、濃密な時間を提供することを優先します。そしてもちろん、あなたと僕たちを繋ぐ物語を。

 この劇場で過ごす時間が、今日いらして下さったあなたにとって、素敵なものになりますように。

 ご挨拶に代えて。

 プロデューサー・篠田 青

 そして。

 僕にきっかけを与えてくれた吉松さん、支えてくれるスタッフとキャストのみんな、そして、このような生き方をさせてくれるすべての人と、目に見えない何かに、ひたすら感謝を。【次を読む】
posted by 東京青松 at 00:00| 東京青松理論