2006年03月05日

星屋心一の作品解説・植林二本目篇
 その7 「出会いという物語」

――むかしむかし、どこか遠く。
  地球によく似た星の、小さな国でのお話。
  小さな国のお姫様が、お供の隊長に言いました。
  「ねえ、たいちょう」
  「何ですか、姫」
  「ひめねえ、おおきくなったらたいちょうとけっこんする」
(「序」・序での記述はスクリーンに文字のみが投射されている)

 出会いが物語の重要な要素であることは常識である。『たからもの』の物語は一方で、この出会いのみに奉げられると言ってよい。と言っても、新たな人物との出会いばかりが頻繁に繰り返されているというのではない。相手の心が、ふいに自分の前にあらわれる、そうした出会いが前半部では繰り返されているのだ。

 引用では、隊長は「結婚」を口にする姫と出会う。子供の無邪気な恋愛ではあるが、そうした恋心を抱く姫に対して、今までの見方をわずかに変えるだろう。彼はこの引用の後に「しかし、私には婚約者がおります」と述べるように、子供を言いなだめる目的だとしても、自分の恋心を姫に明かすことになる。相手の心に触れる瞬間、人の心はやはり外にあらわれてしまうのだ。

 つまり出会いは、見知らぬものたちだけがなすものではない。真新しい出会いは、既知の誰とでも起こりうる。そのこともまた、常識に属するだろう。しかし、『たからもの』が特殊なのは、この心の出会いが相手と自分の属する世界さえ変える力を生み出すことだ。それが「地球によく似た星」の奇跡であり原理である。この記述は、いまだ謎めいた断定でしかないが、私はこの物語の世界の謎を解き明かしたいと思う。真に作品と出会うために。【次を読む】
posted by 東京青松 at 00:00| 作品解説・植林二本目篇