2006年11月26日

星屋心一の作品解説・植林三本目篇
 二章 第二部 強固な信頼を生むものとは何か(1)非現実さの中のリアル

 心の同期によって日常の幸福を生み出すこと。その実現を真摯に求めているのが『あなたへ』だとすれば、この物語の設定にある「非現実さ」をどう捉えるべきか。ここで言う「非現実さ」とは、田中博司が幽霊であること。そして寺崎守、水元翼が幽霊を成仏させる「国家公務員」という職に就いていることを指している。


――田中:ありがとうございました。変な話ですけど、死んでから最高の友達ができた気分です。(十三場)


「最高の友達」とは、寺崎と水守を指す。田中博司は幽霊にならなければ、彼らと出会うことはなかった。そして田中博司は彼らとの交流の中に力を得て、心の同期を開始している。つまり、心の同期の中核には、幽霊にまつわる「変な話」=「非現実さ」があると言っていい。このとき、一つの問いが問われなければならない。それは「心の同期を生み出す条件が真に日常の中にあるのか、それとも非現実というフィクションの中にしかないのか」である。

 結論を先取りしよう。心の同期は日常の中にこそある。そう信じる私は、この物語の「非現実さ」について考えなければならない。そうして、物語という「非現実さ」の中にある心の同期を現実に還付させたい。第二章第二部は、作品が現実に生きるという証明に捧げられる。具体的には、この二つの「非現実さ」の設定に明白なリアルがあることを書く予定である。【次を読む】
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